待つことをやめてハンブルクに1

今回の旅は、まだ、整理できていない。
そもそも、今回の旅もあてどもなくさまよう予定だった。美術館に行って、ケーキを食べに行って、適当に。1月3日から6日まで。そう思っていた予定を変えたのは、完売と諦めていたジャズピアニストの小曽根真とオーケストラ:NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団、指揮:アラン・ギルバートのチケットを見つけたからだった。11月末か12月初旬に、たまたまFacebookの広告で見て、気になってはいたけど、遠いしな、と思ってその時は予約しなかった。

でも、職場が2週間の冬季休業に入り、3日目にして、退屈で、退屈で、くさってしまうんじゃないかと、どうしようもなくて、決断したのが、前述した期間でのハンブルク行き。12月27日に列車とホテルの予約を取る。翌28日、せっかく行くならElbphilharmonieで何か観たい・聴きたいと公式サイトをうろついている時だった。30日の初日のコンサートに「残席わずか」の表示。3席。1席は正面、残りの2席はオーケストラの背中を見る席だ。一度買い物かごに入れて迷った。購入の制限時間が切れる。二度目、買うしかない。正面の席を買った。誰との約束もないし、うん、行こう。
それから急いで電車チケットの取り直し、ホテルの再予約。もちろん、安く上がった、と思っていた金額の2倍を超えてくる。

それでもやっぱり、旅立ってよかった。

6時間近くの電車の旅。ちょうど半分過ぎたくらいで、隣に座っている女性にどこに向かっているの?と質問すると、わたしと同じハンブルクまで。それならばと、美味しいコーヒーが飲めるところを聞くと「わたしは詳しくないけど、友達に聞いてみるわ!わかったら教えるわね」と、WhatsAppのグループに投げてくれた。すると数分と待たないうちに返信が。滞在中は何をするのかに始まり、自分が今、何をしているのか、何をしてきたのか、どう感じているのか?などなど、残りの時間はあっという間だった。

ホテルについて荷物を置いて、少し早めに会場に向かう。入り口のエスカレーターは九州国立博物館への道のりを感じさせる雰囲気がある。ロビーの天井についているランプはなんだか昭和の雰囲気だ。室内と展望台を区切るガラスが波打っていて面白い。なんて見学しながら開演を待つ。

オーケストラの演奏が始まってすぐに涙が出てきた。自分でもなんで泣いているかわからない。マスクをしていてよかったと思う。弦楽器の個があるけど一体感のある美しさ、パーカッションの正確なリズムと強弱、管楽器の明るい音色と力強さ、指揮者の背中。ひとりひとり、ものすごい人たちなのだ。自分の音に、フレーズに、リズムに、楽譜に、強弱に、日々日々向き合っている人たちだろう。三曲目に小曽根さんが登場される。意外と小柄なことに驚く。わたしは祈るような気持ちで演奏を聴いていた。(わたしが祈る、心配する必要なんて、全くないのだけど)演奏が終わって、立って拍手を送る人もいて、隣のご婦人が「素晴らしかったわ。まるでプレゼントね!」と話しかけてきてくれて、ホッとした。休憩に入り、グラスワインを買って飲む。それから席に戻り、再び演奏に聴き入る。

翌日の演奏がライブストリーミング(リンク先は収録のコンサート)で放映されるということでもう一度聞く。また初めから泣く。ライブストリーミングならではで、指揮者の方や奏者の方々の表情がよく見えてとても良かった。そして小曽根さんはノリに乗って、会場のテンションも高い、とってもいい。その場に居れなかったことは悔しいが、会場と観客にこの短時間で(というか翌日)”合わせてくる”のはすごい。上手くなることが当たり前ではない。前日を超えてくる。
小曽根さんが急遽出演されることになったのはチケットを買う段階で知っていたが、調べていると、26日まで日本でコンサートされて、28日にドイツに飛んで、30日の本番だ。そして先ほどわかったのだが、4日現在、なんとニューヨークにいらっしゃる。どうして白羽の矢が立ったのだろう?と調べていると、2014年にニューヨーク・フィルハーモニックで指揮者のアラン・ギルバートさんと共演されている。曲はラプソディ・イン・ブルー。この時の縁だろうか?

ちなみに旅行2日目の大晦日、31日は自炊するための買出し以外何もしていない。疲れているな、と感じていたこともあってちょうど良かった。ホテルには一人暮らしできるほどのキッチンと道具が揃っていて、長期滞在や自炊したい人にはぴったりだ。ホテルでスーパーのサラダは食べない、と決めていたけど、今回は年末年始でどこも閉まっているだろうし、そもそも予算オーバーだし、買ったサラダじゃないし。という言い訳をして毎日自炊した。

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